企画展示展示者インタビュー
三組目
展示名「棚村彩加と握手をする会」
展示者名/所属:棚村彩加/絵画科油画専攻3年
展示課、以下展:今回の企画展示での作品についての説明をお願いします。
棚村:なぜ私が「美しすぎるのか」といえば、棚村彩加が「生きているから」です。
私は「生きてることが1番美しい」と思っています。
残念ながら作品の中には「生きている作品」と「死んだ作品」がありますが、
その違いは、作家が亡き後も、作品に魂があるかどうかであると考えています。
私にとって作品は、私の生き方そのものです。
一瞬一瞬の生きる衝動を全力でぶつけなければ、私の作品は死んでしまうでしょう。
今回私は「沢山の人と握手したい、会って話してみたい」という衝動に駆られました。
なぜなら自分の死を予期したためです。
生きている美しすぎる自分と、美しすぎる生命が出会うことはどれほどの奇跡だろうか、
とさえ思えます。握手から生まれる新しいコミュニュケーションによって、
私との出会いが忘れられない記憶になるでしょう。
それが人と人とか出会う時に生じる、目に見えない美しさだと確信しています。
今回のパフォーマンスで多くの人と出会い、新しい美を沢山発見できることを楽しみにしています
私が死んでも、人の心に死んだら死んだで生きていくような作品に、私はなりたいと思っています。
展:制作のきっかけを教えてください。
棚村: 20歳最後の月、最愛の家族を亡くしました。もう一度「会いたい」と何度も後悔するとともに、
「自分もいつか死ぬ」ということを確信しました。
そうして私は「生きているうちに沢山の人と出会い、交流したい」と考えるようになりました。
展:これまでもコミュニュケーションアートを行ってきているが、
今回の展示はそれまでの制作を経た上での、発展的なアプローチなのでしょうか?
あるいは“他者との交流、及び、そこから生じる美”を観測するための、
今までの制作の角度を変えたアプローチなのでしょうか?
棚村:これまでの展示を経た上の、発展的なアプローチです。
展:これまで制作してきた作品はどのようなものなのでしょうか?
棚村:これまでも、コミュニュケーションアート、リレーショナルアートについて展開してきました。
今年の1月は藝心寮の庭に自室のベッドを置き、丸2日間睡眠するパフォーマンスを行いました。
これは庭にベッドが存在するという不思議な光景につられた寮生や地域の人たちと交流するパフォーマンスです。
今年の2月は福島の被災地に行き、現地の小学生と交流し、
未来の街を作るアートプロジェクトに参加しました。
今年の5月にはエレベーターの中に半日住み、
入ってきた人たちと友達になるパフォーマンスを行いました。
このとき、会話の内容を決め、そこから会話がどう発展するか仕掛けました。
展:“他者との交流”と“その交流の中で生まれる美を発見すること”
が一貫した制作テーマとしてあるように思われますが、
これまでの制作を通して、具体的にどのような交流や発見がありましたか?
また、その経験から、今回の展示がどのような展開になるかの予測などはあるでしょうか?
棚村:制作をすることによって、普通に生きていれば関わることのなかった人たち、
一生会うことはなかったであろう人たちに出会い、交流することができました。
それを今回の作品でも期待しています。
展:企画展示テーマについてはどのように解釈していますか?
棚村:今回の企画テーマは、私の作品のためにあるようなものだと思っています。
人と人とのコミュニュケーションの中には身近な美があると信じています。
展:藝祭という場についてどのようにお考えですか?
棚村:今回私は、ミス藝大Aチームのモデルを担当しています。
ミス藝大のパフォーマンスの一部として、企画展示を連携させています。
某有名アイドルの握手会と同じ仕掛けを施し、
「ミス藝大Aチームに投票してくれた人に握手券をプレゼントする」というルールを設けるというものです。
そこからどのように会話が発展するのか、新しいコミュニュケーションは生まれるのか、
自分を通してパフォーマンスを展開したいと考えています。
【9月に個展を開催します。】
棚村彩加個展「マミー」
9月3日~22日根津カレーlucky(東京都文京区根津1-16-13-1F)
また、ステーションギャラリーでも絵画展示をしています。
展示は、専門の絵画制作、パフォーマンスの二股をかけて行っています。
広い目で美術が観れるように、学生のうちは幅広く作品を発表したいと思っています。