2020年、史上初のバーチャル藝祭を開催します。
演奏会、展示、ゲリラパフォーマンス、インタビュー企画などを、バーチャルならではの形で発信。
今年のテーマは、「the」。あなただけの冠を持って、バーチャル藝祭に訪れてみませんか?
より多くの人に、そして世界に。藝大生の情熱を届けます。
“the”
冠詞の1つで、これだと特定できるものに付けられる。
聞き手と話し手の中で共通認識として理解されているものや、この世の中で一つしか存在しないものに使われることが多い。
また抜群、無類、最高のという意味を含ませるために用いられる場合もある。
東京藝大の学生はそれぞれ異なる環境で育ち学んできたことで、一人一人異なる考えをもっており、唯一無二の存在であることは間違いありません。
そんな学生たちは日々世の中の問いに自ら目を向け、自分だけが表現出来る「藝術」という形でその問いにこたえています。
「グローバル化」という言葉が当たり前になり、むしろ使われなくなってきた現在、世の中に溢れている問いは国境を超え全世界共通のものとして扱われてきています。
我々学生は日本国内に留まらず、今までよりさらにTokyo University of ''the'' Artsという名に恥じない世界を魅了する活躍をすることでしょう。
"the"という冠を被るにふさわしい学生たちが集う東京藝大。そこで巻き起こる"the"藝祭は、きっとみなさんの想像を超える閃きに溢れています。
藝祭委員長 木村浩太
例年の『藝祭』はここにはありません。
上野で巻き起こる『藝祭』の熱を、この広い電子の世界へと持ち出すことは決して出来ません。
私たちが目指すべくは、この会場で新たな熱を生み出すことです。
この会場だから届く思い、この会場だから提示できる問い、この会場だから答えることができる問いが、必ずあります。
私たちが日々向かい合い続けてきた一人一人の芸術に、少しでも触れていただければ、幸いです。
そしてこれをきっかけに、来年度以降の『藝祭』にも是非足を運んでいただけたらと思います。
皆様の居場所から、自由に、気の向くままに、『バーチャル藝祭』をお楽しみいただければと思います。
また、最後にこの場を借りて、開催までご協力いただいた全ての方々に心より御礼申し上げます。
皆様だけの、素敵な冠が見つかりますように。
学長 澤和樹
昨年末には対岸の火事にしか思えなかった新型コロナウィルスの地球規模の感染拡大により、世の中は一変してしまった。例年、新入生を中心として藝祭に向けた御輿制作は、難関の入試を突破して「藝大生」となった事を実感し、炎天下、汗水たらしての共同作業は、学生同士の絆を育む重要なコミュニケーションの場でもある。4月の緊急事態宣言を受けて、三密を避けようのない御輿制作、そして近年、一日当たり1万人を超える入場者が定番となった藝祭を中止せざるを得ない事態となった。実行委員会、大学当局としても苦渋の決断だったが、そこは転んでもただでは起きない藝大生。5月から1ヵ月遅れで始まったオンライン授業の中、実技レッスンや作品制作の場で苦労しながら培ってきたノウハウを生かしつつ、オンラインによる「バーチャル藝祭」が幕を開けることとなった。withコロナ、afterコロナでの新しい芸術表現の在り方を模索し、唯一無二の“the”藝祭となることを期待している。
副学長 安良岡章夫
“the”の存在を初めて知ったのは「ザ・ビートルズ」による。1966年の日本公演をTVで見た記憶が僅かに残っている。1980年代までは大のプロレスファンであった私にとっては、例えば「アブドーラ・ザ・ブッチャー」。前者は最高!後者は最悪!、何れもそれぞれの意味において比類ない。「ザ」を「座」と記せば何人かが集まっている場所、またはその集まりという意味になる。
この「場」に極めて個別的な存在であることを標榜する人々が集まるのが、藝大の在り様である。そのような意味でも、藝祭は彼らの創造的エネルギーを学外に示す格好の舞台であった筈だ。
コロナ禍で藝祭を中止せざるを得なかった2020年に、「バーチャル藝祭」なるものが企画された。今時稀な人間臭さに満ちた例年の藝祭が、今回は何ともcoolに繰り広げられる。そこに未知なる発見があるかも知れない。
ともあれ「The Geidai」の底力を見せつけて欲しい。成功を祈る。
副学長 清水泰博
今年はコロナの地球規模の大流行で、改めて我々皆が微妙なバランスの「宇宙船・地球号」に乗っていることを実感することになりました。現代ではどこかで起こったことが一気に地球全体に影響を与える現実を改めて知ったのです。そんな今年の藝祭は今までに全くなかったものになります。そこで何が出来るのか。
私は実は困難な時ほど逆にいいものが出来る可能性があるのではとも思っています。これはその困難という制約が、逆に人に深く考えることを余儀なくさせると思うからです。出来ることが限られたことをマイナスと捉えず、今までになかった新たな表現を試すチャンスと考えること、そのような深く考えられた表現を期待しています。このコロナの状況を逆手に取った、今までに見たことのない表現の数々を見られる「The藝祭2020」を楽しみにしています。